ABARTH 500 1.4L 16v Turbo 5MT

ABARTH500の修理に手こずってしまったので、備忘録として書いておきます。

エンジン警告灯(点火不良)で悩んで色々な部品を交換したのですが、結果としてDENSOのスパークプラグの不良が主たる原因でした。NGKのスパークプラグに交換したら治りました。

このDENSOのスパークプラグは、ECサイトなどで「アバルト500適合確認済」として販売されている物なのですが、どうも私のアバルトとの相性は悪かったようです。もし同じトラブルを抱えている人がいればと思い記事をまとめてみます。

ABARTH 500 1.4L 16v Turbo 5MT
▲ABARTH 500 1.4L 16v Turbo 5MT


■2番シリンダのミスファイア

該当車両は2014年製アバルト500。型式ABA-312142。メーターがTFT液晶になったけど、テールランプは前期型タイプの世代の中期型と呼ばれるモデルです。走行距離は約120,000km。

まず2023年夏の終わりに車両購入して乗ってみると、ターボ圧は適正にも関わらずスペックほどはパワーがない、というのが第一印象でした。

メータークラスタに"Check engine"の表示が点灯
▲メータークラスタに”Check engine”の表示が点灯

 それからほどなくしてエンジン警告灯が点灯。診断機を車両に接続してエラーを吸い出すと「2番シリンダ―ミスファイア」の表示だったので、点火系をまず疑いました。

診断機に表示されたエラーコード
▲診断機に表示されたエラーコード

 アバルト500はダイレクトイグニッションです。イグニッションコイルを正常に動作している他のシリンダのものと入れ替えると失火シリンダ変わったので、失火の原因はイグニッションコイルにあると判断。該当イグニッションコイルを新品に交換しました。

また、購入した車両には、何故かDENSOの新品プラグ「IRIDIUM IXU27」が車載されてたので同時に交換を実施。外したプラグは同製品で、状態は湿っており、被り気味でした。

外したスパークプラグの電極部。分かりずらいが湿っている
▲外したスパークプラグの電極部。分かりずらいが湿っている

 当然ですが、この年式のアバルト500はフューエルインジェクションなので、燃調はコンピュータによって適切に調整されているはずです。そのはずなのに被り気味なのは少し違和感を感じました。

エアクリーナーBOXを外したエンジンルーム
▲エアクリーナーBOXを外したエンジンルーム

 このクルマは、タイミングベルトやウォーターポンプの交換などは定期的にされていた履歴が残っており、イグニッションコイルも汚れ具合から判断するに、新車から1度以上は交換がされているようでした。前オーナーさんからは新品プラグのほかに新品タイヤなども預かっており、程度はよさそうな個体でした。

ただ、車両を購入した金額がとても安く買ったことと、走行距離も(日本国内においては)過走行気味なので、それを加味するとこんなものなのかな?なんて考えてました。

 イグニッションコイル1本、スパークプラグ4本を変えると症状は解消。正常状態に戻りました。


■再び警告灯点灯。2番・4番シリンダミスファイア

診断機に表示されたエラーコード
▲診断機に表示されたエラーコード

 交換後、少しの間は快調だったけど、また2番シリンダ失火、あと4番も失火し、再びエンジンチェックランプが点灯しました。

 私の持っている診断機だと「2番・4番シリンダミスファイア」までの情報しか分かりませんでした。正常に点火しているシリンダのイグニッションコイルと、点火不良を起こしているイグニッションコイルを入れ替えても、今度は失火シリンダは変わりません。

各イグニッションコイルのカプラー不良やアース不良を疑うも問題点は見つからず。

IGコイルにマーキングしてテストしている様子
▲IGコイルにマーキングしてテストしている様子

 そのため今度は点火装置ではなく、燃料噴射装置側になるインジェクターの状態を点検することにしました。

(燃料噴射側に原因があっても、診断機のエラーコード上では”ミスファイア”と表示される場合がある為)


■インジェクターとプラグの清掃

諸々の安全対策したあとインジェクターを外して各インジェクターを見てみると、12万km分の走行によりお疲れ気味。蓄積された汚れが溜まっていましたのでクリーニングを実施しました。

外したインジェクターの汚れ具合
▲外したインジェクターの汚れ具合

 また各インジェクターの抵抗値測ると4つ共全て同じ数値。インジェクターの正確な正誤判断にはオシロスコープが必要になりますが、私は持っていないため、簡易テスターの抵抗値から壊れてなさそうと判断しました。

インジェクターの抵抗値
▲インジェクターの抵抗値

 デリバリーパイプに目をやると、フューエルプレッシャーレギュレータの負圧ホースが経年劣化でカチカチ。2箇所破れてる部分を確認できました。

劣化したフューエルプレッシャーレギュレータ負圧ホース
▲劣化したフューエルプレッシャーレギュレータ負圧ホース

 アバルトの走行距離は約12万kmです。おそらく無交換ですしそりゃいかん、ということでバキュームホースを交換して、インジェクターも清掃して組み付けを行いました。

DENSO IXU27 スパークプラグ
▲DENSO IXU27 スパークプラグ

 バラした手前、スパークプラグも念のため点検すると失火してたシリンダは被り気味だったので、清掃することにしました。このプラグはイリジウムなので、真鍮ブラシで磨くなどの乱暴な方法での清掃はプラグを痛めてしまいます。そのため慎重にエンジンコンディショナーにドブつけして清掃後乾かして、再度組み付けを行いました。

また、プラグホールからシリンダ覗くと、結構カーボンの蓄積が見えたので、気休めだけど燃料添加剤も入れておくことにしました。

元に戻したあと、ECUリセットして再チェックすると症状は改善。その後200km乗っても好調でした。

この時2023年12月、車検期日が迫っていました。履歴が分からなかったので、念のためエンジンオイルとバッテリーを交換したあとユーザー車検にて車検を通しました。検査は問題なく通過し車検を取得できました。

何が原因か一概には言えないのかもしれないけど、治った。これで対処よかったのかな?再発しないことを祈る、などと考えてました。


■それでも治らない。警告灯点灯。失火する

300kmほど走行後、再びエンジンの振動が増え、警告灯が点灯し症状が復活しました。同じく2番・4番シリンダ失火です。

インジェクターの部品番号
▲インジェクターの部品番号

 色々な作業を行っているので、自分がした作業の中にミスがないか再確認したのですが、原因は見つからず。清掃したインジェクターに不具合があったのでは?と考え、以前外した際にインジェクターの部品番号は控えていたので、新品インジェクターに交換することにしました。

安全上バッテリーを外し、インジェクターの補正値をリセットをかけられる、以前からほしかった診断機も手に入れ交換作業を実施しました。

また再点検すると、他のバキュームホースにも経年劣化が確認できたため該当箇所を交換することにしました。

それでも症状はかわらず、プラグがすぐ被ってしまいます。

また、点検しても問題はなさそうに見えていたエアクリーナーなのですが、吸入空気と燃料噴射のバランスが狂っているのかもと、念のため新品に交換することにしました。ただし症状は変わらず。

(あとから考えると、この辺の作業は正直いらなかったと思います)

交換したエアクリーナー
▲交換したエアクリーナー

 この時、もっと根本的に壊れているのか?と疑いました。冬を越したことで、冷却水が100ccほど目減りしました。

また、寒い時期にエンジンをかけたことによって、マフラーから白煙が一瞬あがることに不安を感じオイル下がりを疑いました。まだ、各シリンダの圧縮は測定してません。

ヘッドガスケットが抜けてオイル下がり?最悪エンジン載せ替えか?と思ったのですが、しかし、オイルの量は減ってませんし、エンジンオイルを交換した際にもLLCなどの異物混入は確認できませんでした。冷却水にも混入物はありません。

最悪な事態と考えるにはまだ証拠が足りないと考えました。

埒が明かず、ちょっと途方に暮れてしまいました。今までやってきた自分の作業を整理することにします。

・IGコイル1本交換

・プラグ4本交換(DENSO IRIDIUM IXU27)

・インジェクター4本交換

・バッテリー交換

・エンジンオイル交換
・バキュームホース2本交換

・エアクリーナー交換


■スパークプラグについて考える

スパークプラグ
▲スパークプラグの熱価は、DENSOとNGKとで異なる基準で表記されている

 同封されていたスパークプラグ、DENSO製の「IXU27」について調べてみると、このエンジン指定のスパークプラグであり、メーカー適合はとれている部品でした。

■DENSO SPARK PLUG CATALOG 2022
https://www.denso.com/global/en/products-and-services/automotive-service-parts-and-accessories/plug/catalog/pdf/catalog_generic.pdf

スパークプラグには熱価というプラグが燃焼で受けた熱を放出する度合いを示す単位があります。

外した「DENSO IXU27」は、熱価27(NGK相当で言うところの9です)。

熱価表
■熱価対比表(NGK:DENSO)

■NGK スパークプラグ 外国車向け新品番発売のご案内
https://www.ngk-sparkplugs.jp/image/upload/09eec3db1b6e5f9a1c990e698978febe.pdf

スパークプラグについて調べていくと、NGK製のプラグでABARTH500のT-Jetエンジンの適合が取れている「熱価8」のスパークプラグ「LASER IRIDIUM IKR9J8」の存在を知りました。

これは、DENSO IXU27よりも1段階冷え型プラグになります。

(後から知ったことですが、DENSOにもDENSO IKH24と呼ばれるNGK8番相当の互換品プラグがあるそうです)

スパークプラグについて、以前ディーラーの整備士や車両開発に携わるエンジニアの方から聞いた話によると、

「キャブレター車や、バイクのエンジンの場合は、プラグの焼け具合で判断して熱価を変更してもいいが、最近の4輪車のフューエルインジェクション車では、プラグの焼け具合はユーザーが気にするものではなく、機械にまかせていて基本問題ない。メーカー指定のプラグの熱価をつけるのがベター」

という鉄則があるとのことでした。

 ただ今回の場合…

・DENSOの**熱価27(=NGK 9番相当)**で被り気味になる(失火、かぶる、エンジンの吹けが悪い)
・私の乗るABARTH500のエンジンに適合する異なる熱価のスパークプラグが公式に存在すること
・ほかの場所に不具合が見つけられない

 以上を踏まえて、熱価を1段階下げて様子を見ることにしました。NGKのLASER IRIDIUM IKR9J8に変更することにしました。

 すると何事もなかったかのように問題が解決しました。また、燃費が格段に上がりました。


■今回の不具合を考える

Fixed!
▲Fixed!

■2025/07/24追記:その後約10,000km(サーキット走行含む)してますが、問題は再発していません。

結論を出すまでに色々試行錯誤しましたが、結局、今回の原因はスパークプラグが主たる要因だったように感じます。

冬の始動時に濃い燃料噴射を必要とする場面が多かったことなど、スパークプラグに酷な環境下が重なったことで、今回の解明に時間がかかった要因のひとつなのかもしれません。

これはまた異なる事例ですので、今回の一件とは異なる話にはなりますが、スパークプラグにまつわる奇妙な不具合でこんな話も聞いたことがあります。

2010年前後のルノースポールの車両(ルノー・メガーヌ2RS)にデンソー製のスパークプラグを取り付けていたところ、アクセルを戻しても(一瞬)加速し続けるという症状が出たそうです。

その時は原因がなかなかわからず困っていたところ、スパークプラグを他社(NGK)に交換したところ症状が改善された、という話を聞いたことがありました。

デンソーのスパークプラグは省燃費性重視のため?かなり事細かな制御をしているそうで、それが悪さをしていた事例だったそうです。

トヨタや日本メーカーのクルマに取り付ける際には不具合はでないかもしれませんが、欧州メーカーのクルマに日本製部品を取り付ける際には注意しなきゃ、と思った出来事でした。


■今回の作業からの反省

よかれと思って、同時進行にいくつかの作業を同時に行ってしまったことで、原因判明まで時間がかかった。ただ、スパークプラグにアクセスするにはエアクリーナーボックスなどの着脱が必要なので、手間なので仕方ない部分もあるとは思う。

少し、事態を複雑に考えすぎたのかもしれない。慣れている人からしたら普通のことかもしれない。

少なからず、必要以上に部品の交換をしてしまったのかも。

ただ、今回色々手をかけたことで、クルマの調子は、以前より良くなり、コンディションが回復した半面もあった。

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